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BORN

シャワーが
僕の背中に降りかかって
響く心地よい雨音と
燃えるようなヴェールを

僕は水滴に打たれながら
まんまるく膝を抱えて
その膝の上に頬をのせる
まっすぐに流れる海藻を

なにかの番組で
胎児はこうして過ごすという
熱い水滴が横顔をつたい
唇の隙間から入りこむ

きっと暗証番号が誕生日の主婦も
社長と飲み会で二日酔いのサラリーマンも
同じ格好で窮屈に、無垢な顔で
簸たすら壁を蹴っていたのだろうか

降ってゆく小さな粒が
僕をコンスタントに暖める
零れ落ちて流れる粒に
僕は溶かされてゆく

排水溝の奥から
波打ち際の音がする
冷え出した背中を
暖める手など空しく

開きかけた唇
そこから何が零れるの
なにも言えないまま
息を吸って不器用に愛想笑い

曇った鏡に映る背中
肩甲骨の茶色い黒子
羽ばたいている刺青
誰もが愛したすべて
by haccax | 2006-11-10 20:25 | 飴玉(短編)


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