人気ブログランキング | 話題のタグを見る

前奏

僕が机に向かっている間
誰一人として、僕に話しかけることができない
それは透明なフィルターのようなもの
僕は教科書を手にして静かな見えないバリアを張る

誰かが笑うと
僕も笑わなきゃいけなくなったから
また少しずつ疲れてきたみたいだ
線路の向こう側で、セミが不器用に鳴いてた

少しずつ時間が流れていて
少しずつ歯車が磨り減っていくのなら
僕はそうして積もっていく屑のよう

僕の向かっている机
それは僕を縛りつけた魔法の机
誰一人干渉できない
透明な、フィルター

ラジオから流れてくる声が笑った
夏だからね、といって、からから笑った

風鈴が僕を呼ぶころ
すこし外へ出てみようか
by haccax | 2006-07-11 19:11 | 飴玉(短編)


<< Continue 言伝 >>