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灰色の国(9)

不意に 耳元でキイキイキイと リピートするノイズが 貫きながら響いて
驚いて 半ば 呆れながら 目を醒ました。
鏡を 目の前にしているわけでも ない。

外のパーツだけ双子の 僕ら。

瞳の中のヒカリを 失ってしまった茶色の眼を 肌色の油ねんどに埋めて
半開きになった 唇からは 意味の無いピープ音の羅列が 吐かれる。
頬の筋肉を 全く使わずに「造られる」笑みは 僕に軽い恐怖を与えてから
静かに 沈黙の湿った空気を 紡いだ。

僕の 身代わり。

僕がボクを産み 僕がボクを愛し 僕がボクを裏切り 僕がボクを殺す。
その情景は とても滑稽だ。
お前には僕のように軽やかに笑うことも出来ないだろう。
いくら巧みにプログラムをインプットされようが無駄だ。
馬鹿正直な お前に 上手な嘘はつけない。

ボクの 身代わり。

例えバグが発生したとしても お前は自分で対処することができない。
適合するワクチンがなければ。
入力信号がなければ。
暗号文のような記号と数字の束がなければ。

愚かな知識を羊水として産まれてくる お前は
ひたすらに宛ても無く エラーを発信しつづける。

ニンゲンさえ 居なければ。
お前は 動けない。

オレハ ウゴケナイ。

―――――シャット・ダウン。


(“R・U・R” 応答セヨ)
by haccax | 2004-10-05 22:45 | (灰色の国)


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