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灰色の国(4)

喉が潰れて血を吐いても、僕は歌い続けました
それでも君は一度も外へでて
聞いてみようとも思わなかったようです

月が溺れて光を失っても、僕は歌い続けました
それでも朝はやってきて
誰とも知らずに、おはようを呟きました

何を叫んでも、何が聞こえても
君は微動だにしませんでした
あくまで僕からのアングルの話ですが
少し君は、戸惑っていました

何故なら君は、僕のように喉を潰し血を吐きながら歌い
闇の中で生暖かい透明な水を目から零していたからです

ある晩、ふと静寂が訪れました
誰ともなく、ほっとした面持ちで外へ出ました
そこに倒れていたのが誰とも知らず
ただ自閉的にドアを閉ざしてしまったのです

それから、でした

音のなくなった世界に一粒の音が零れおちました
それは紛れもなく僕の涙で
君のようでもありました
消えることなく滲むことなく、深紅と白濁の液体が混ざって
鈍い音を、たてました

それだけで、十分でした

全てが止まったように灰色に凍りついた色は音を取り戻し
静寂はその音によって掻き消されました

月が溺れる宵には、その日のことが鮮明に浮かび上がるようです
誰も知らない闇の番人は
僕であり、君であったから


(音闇と月詠と灰色の国)
by haccax | 2004-09-06 09:14 | (灰色の国)


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