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チェック・メイト

一歩踏み出した階段
意味もない
やっと拾い上げた筆
意味もない

逃げたいのに立ち上がれない
黒椅子が僕を追い掛け回す
ゼブラのチェス・ボードの上
「僕」という名の存在

お日様とお月様
お話し合いをして
半分ずつ僕を照らす

僕もそれに倣って
半分ずつ僕を分けて
影と一緒に歩く

届くはずもない
あの子からの手紙
僕はまだ待ってる

書くはずもない
あの子への返事
僕はただ待ってる

空虚な箱庭
そこに何を夢見るの
廃墟に残された月
あと少しで落っこちる

僕は何を待ってるの
僕は何を持ってたの

チェック・メイト
僕は動かないといけない
走り出さないと
逃げないと

子守唄のオルゴール
止まるのは
もう少し先のお話
# by haccax | 2006-07-25 08:55 | 飴玉(短編)

妄想庭園

ああ、
手放したくない箱庭。
拙い言葉。
意味のない感情。
音のない羅列。
声のない叫び。

ああ、
手放したくない箱庭。
まどろむ蝶。
灰色の平原。
花の咲かない野原。
満たされた幸福。

あと少しで、
尽きてしまう。
目を離したすきに、
崩れ落ちてしまう。

知らない間に何時
もう三時
朝御飯は忘れてた
どうするの
昨日の空は大荒れ
今はどう
カーテンの外薄暗い
馴れ合うだけの世界
それはもう
いつの話だったっけ
怯える前に消えてゆく
元のように失って
手の中にあったものは
なんだったっけ
それさえ
それでさえ
思い出せない
ああ、
もう手遅れなんだ。


あと少しだけ、と

唇が微かに動いたけれど

どうやら僕は、

声さえ忘れてきてしまったみたいだ


ああ、
愛しい箱庭、
美しい箱庭。
もう、
そこには何もはいっていない
置き去りの空っぽ洞窟。

僕は、
ただ掘り進んでいただけ。
# by haccax | 2006-07-20 15:40 | 飴玉(短編)

4号室のてんごくへ

サヨナラすれば、
少しは気が楽になるだろうか。
少しは恋しくなるだろうか。
少しは興味が沸くだろうか。

どれも疲れそうなので、
僕はやめておいた。

キヲクをキロクすれば、
少しは勇気が出るんだろうか。
少しは癒されるだろうか。
少しは愉快だろうか。

やっぱり気疲れしそうなので、
僕はやめておいた。



でもサヨナラしてキヲクをキロクしないと、
余計に気疲れをするから、
僕はサヨナラする。
僕はキヲクをキロクする。




しにたいのなら
しねばいいんだ
くちひげのかみさまが
てんごくにつれていってくれるのなら
はくいのてんしが
てんごくにつれていってくれるのなら
たえることなど
くるしむことなど
ひとはりで

どうぞ
ごじゆうに
4号室のてんごくへ
# by haccax | 2006-07-19 14:04 | 飴玉(短編)

雨天決行

明日雨が降ればいい、と笑った
てるてる坊主を逆さに吊った
僕は傘をもたず
外へ出た

騒がしい自動車の音さえ
雨のしずくが吸い込んで
僕は一層気分がよかった

あの塀に
手が届くまで
あと少しだけ

ガンバレ、と言いながら
あの女は徐にライターを取り出して
うまそうに煙草をふかした
それから携帯電話の呼び出し音が鳴り
可笑しそうに電話をした
去年の夏のはじめ

雨がもっと降ればいいのに
雨さえもっと

雨天決行の花火大会
小さな線香花火は
ぽとりと頭を落とし
ジュッと音を立てて
水底に沈んでった
去年の夏のおわり
# by haccax | 2006-07-19 13:38 | 飴玉(短編)

図工

愛想笑いが上手だね、と
愛想笑いをされたので
僕は仕方なく
愛想笑いを返した

それで笑えたならいいよ
僕も笑えたなら

ああ、
材料が足りないんだ。

意味の無い工作
僕にはそれが一番向いている



もう創ってあげないけれどね。
# by haccax | 2006-07-19 13:36 | 飴玉(短編)