つまんないね
君の打った三文字の言葉
親指プッシュ17回の言葉
それが君の5年分の謝罪

ごめんねという
白い背景のなかに浮く文字
伝書鳩のオウムする文字
それが君の5年分の弁護

つまんないね
僕の名前を呼んでた声
初々しさを忘れてしまった声
それが君の5年分の判決

ありがとうという
思い出したように芝居
取ってつけたような芝居
それが君の5年分の証拠

さようなら
最終電車乗り遅れた君
ホームに立ち尽くす君
今負け犬が振り向いた

追いかけっこなら
勝ったのは鬼の僕
逃げ続けるだけの君
憐れで、哀れで

手のなるほうへおいで
君の作ったお城
壊れてしまう前に
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# by haccax | 2006-08-30 18:25 | 飴玉(短編)

美術

半年前かな
僕はウルサイ雑踏の中で
教室から机を出して
画廊を開いていた

一年前かな
誰かが零したペイントが
アトリエの床に固まって
黒い黒曜石のうえ
不自然な赤色

たった3ドルでいいって
僕が力なく笑ったら
すぐにオーケイを出した
僕の目の前に座った子
光に透かした蜜色の髪
不自然な赤色

破れ掛けたキャンバス
天窓の光射して
気付けば羽を捨てた天使は
ちっぽけな箱庭から抜け出した
僕の童話から抜け出した
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# by haccax | 2006-08-09 17:39 | 飴玉(短編)

HORROR KILLER

すぼめた唇が言う
紫色の血色のいい生意気な怖気づいた唇
小さすぎて声が聞こえない
か細い蚊の鳴くような言葉は拾えない

一歩一歩 歩を進めるごとに揺れる銀の十字架
胸の上で左右へと忙しく踊るその艶やかな光
「綺麗なシルバーね」
そう言って君は無垢な顔で笑った

潤った茶色の瞳が動く
壁を通り抜けて見透かすような魔女の瞳
怯えたような気色は一切見せない
死んだように光を失った眼は見えない

君はどれもこれも綺麗なものが好きだと言った
綺麗に群生している黄色い雑草 その切れ端
「いい匂いがするわ」
そう言って君は雑草に鼻を近づけた

血の気のない腕が垂れる
青白い血管が浮き出るほど痩せこけた腕
それでも伸びる手をはたき抵抗する
それでもいずれ死ぬことさえも抵抗する

呪文を唱えるんだって
その唇で
魔法が使えるんだって
その瞳閉じて
魔方陣を描くのだって
その手腕で

ああ、
僕も食べたいなぁ
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# by haccax | 2006-08-04 17:12 | 飴玉(短編)

鬱憤

最近きみが変わったの
そうかい
知を得る泉を知ったの
偉そうに僕に口叩くなよ
知ったふうに僕殴るなよ

最近ぼくも変わったの
そうさ
知を得る泉知ってたの
此処は僕だけが王様だ
知ったかぶりの王様だよ

さあ
僕にできることは何ですか
お靴でもお嘗めいたしましょうか

さあ
君に残されたもの何ですか
狭い箱庭で笑い飛ばしましょうか

ふざけんな。

此の頃暑くなりました
あの日
巣立った青い小鳥どうしたの
君の元に便り届きますか
今どこで何してますか

此の頃遠くなりました
今日も
乾いた黒い硯みているよ
黙ってないで動き出せ
黙ってないでホラ何か嘆けよ

見え透いた嘘重ねて
すこし先が見えないんだ
もうすこし時間が経ったら
透明な僕みえるから
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# by haccax | 2006-08-04 01:04 | 飴玉(短編)

庭園物語(4)

僕のお庭には、
名も知らぬ綺麗な花が咲きました。
大抵それは大樹の根元で群生していたのであまり見栄えは良くなく、
すぐに庭師さんが引っこ抜いてしまうので、
いつもそこには無残に土の掘り返された跡ができました。
僕はそれを目にする度に大層痛々しく思いましたが、
いつもその花が咲いたのを見届けた次の朝には、
一片こぼした花びらさえも綺麗さっぱり姿を消されているので、
辺りはただ見栄え悪く芝生が掘り返されているだけで、
大変詰まらないものでありました。
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# by haccax | 2006-08-01 10:09 | (庭園物語)

庭園物語(3)

僕のお庭には、
時たま庭師さんがいらっしゃいました。
曜日ごとに女性の方であったり年配の方であったりしたので、
それは真に多様な方々がそれぞれに思い思いお庭を弄っていらっしゃいました。
大半は若い男性の方が日替わりで訪問なさったので、
必ずお母様がスリッパを鳴らして玄関までお出迎えなさり、
お二人でお庭のウッドデッキに腰掛けてキングサリを指でつまむ仕草などは、
表しようもなく愛らしく幼い様子だったのだけれど、
いつも決まってお母様は外側から家の鍵をしめて出て行かれるので、
僕はその男性の手に触れているキングサリの匂いもよく知らないまま、
やはり窓の内側からぼうっと眺めているだけで、
大変詰まらないものでありました。
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# by haccax | 2006-07-31 12:59 | (庭園物語)

庭園物語(2)

僕のお庭には、
それは大層生き生きとした草原が見事に広がっておりました。
何度か僕のお友達が僕の家へお遊びにいらっしゃったのですが、
みなさん口を揃えて素晴らしい、とか美しいと仰いました。
僕はその時だけ少し嬉しい顔をするのですが、
本当は一面の原っぱは緑色がただ続いているだけで、
大変詰まらないものでありました。
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# by haccax | 2006-07-29 01:02 | (庭園物語)

起きなさい、と何度か二階から叫ぶ声が聞こえた。
僕は適当に「起きてるよ」と叫び返して、枕元にあったリモコンでクーラーの電源を切る。
ついでに左足を伸ばして扇風機の足を叩くと鈍い音がして、煩い羽音も止まった。

何の音もなくなってから僕は目が覚めた。
喧しい方が起きる気が失せるんだ。
時計の針はまだ午前中を指していて安堵する。
窓の外から、ヘリコプターの上空を通り過ぎる音がする。

ニャーニャー鳴く猫と水面を尾びれで弾く金魚にエサをやり、
僕はカラカラの口と胃をお茶で潤す。
曜日の感覚はあるくせに、日付が全く分からない。
もう七月が終わるという。
まだ梅雨が明けぬという。

昼下がりに電話があり、
宅急便かと思って出ると母だった。
朝御飯は食べたのか、冷房症にはなっていないか。
そんなことだった。
昼間に僕がいることをとても珍しく思ったようで、
僕が家に帰ってきたことを実感したのだという。
もう、
あの日から一ヶ月が経とうとしている。
時間の長さや早さを言葉で表すのは、
本当に難しいものだ。


人間は言葉によって愛情や感情を削られている、と
誰かが言った。
そしてまた誰かが、
100の言葉しか知らぬ人間は、100の感情表現しかできぬ、
と言った。
つまりその行動はまるで、猿程度だと。

喩え彼らの言葉が、僕にとって1000分の1であっても。
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# by haccax | 2006-07-28 14:56 | 飴玉(短編)

庭園物語(1)

僕のお庭には、
それは色々な種類の草木が生えておりました。
けれども僕は何ともなく硝子窓の内側から眺めているだけでして、
カチコチという振り子時計の音だけが響いて、
変わったことといえば、
毎日お天道さまとお月さまが交互に顔を出すだけで、
大変詰まらないものでありました。
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# by haccax | 2006-07-28 14:09 | (庭園物語)

散歩

おなかが減ったよう
だれも喋らない部屋は
明るいオヒサマのほうを向いていないから
すこし涼しいとさえ思う
食い散らかした駄菓子の袋
脱ぎ捨てて丸まった昨日の服
あげすぎた水面に浮かぶ金魚のエサ
潰れたカナブンに寄ってたかる蟻の行列
蝉はまだ鳴かず

キイと自転車の急ブレーキの音
隣の奥さんの愛車を車庫に入れる音
今日は
いや、今日も
小学生の甲高い声はない
三時を過ぎたというのに不思議な気分だ

山奥に出かけた
近いからといって
切符さえ買わないような場所
白い肌で太陽光を反射してる木偶の坊とか
虫食い葉のあいだから洩れた光苔とか
心がしゅんとして
とても静かなんだ

昼下がりの下り電車は
みんなが居眠りをしていて
何時かの映画のワンシーンのように
其の侭、何処か遠くへいけそうだったよ

とても嗄れた声で僕は
いつか
そう話すんだと思う

半世紀とすこし後の僕へ
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# by haccax | 2006-07-25 15:58 | 飴玉(短編)