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しあわせ

ため息ひとつ
幸せが逃げるなら
ぼくにはもう
幸せなんて持ち合わせてない

ああ
どうやって泣くんだっけ?
風呂場でひとり声を殺して
水道水の粒に涙が溶けてくよ
汚い水がジーンズに染み込んでくよ

ああ
そうやって逃げるんだっけ?
布団のなか爪で引掻いて
暖かい毛布も血みどろだ
耳を劈く声のフィルターなんだ

ため息ひとつ
幸せが逃げるなら
ぼくにはもう
失うべき幸せなんて残ってない

君の唇から零れた幸せ
ぼくにはただの薄っぺらい皺寄せ
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by haccax | 2006-08-31 21:45 | 飴玉(短編)

つまんないね
君の打った三文字の言葉
親指プッシュ17回の言葉
それが君の5年分の謝罪

ごめんねという
白い背景のなかに浮く文字
伝書鳩のオウムする文字
それが君の5年分の弁護

つまんないね
僕の名前を呼んでた声
初々しさを忘れてしまった声
それが君の5年分の判決

ありがとうという
思い出したように芝居
取ってつけたような芝居
それが君の5年分の証拠

さようなら
最終電車乗り遅れた君
ホームに立ち尽くす君
今負け犬が振り向いた

追いかけっこなら
勝ったのは鬼の僕
逃げ続けるだけの君
憐れで、哀れで

手のなるほうへおいで
君の作ったお城
壊れてしまう前に
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by haccax | 2006-08-30 18:25 | 飴玉(短編)

美術

半年前かな
僕はウルサイ雑踏の中で
教室から机を出して
画廊を開いていた

一年前かな
誰かが零したペイントが
アトリエの床に固まって
黒い黒曜石のうえ
不自然な赤色

たった3ドルでいいって
僕が力なく笑ったら
すぐにオーケイを出した
僕の目の前に座った子
光に透かした蜜色の髪
不自然な赤色

破れ掛けたキャンバス
天窓の光射して
気付けば羽を捨てた天使は
ちっぽけな箱庭から抜け出した
僕の童話から抜け出した
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by haccax | 2006-08-09 17:39 | 飴玉(短編)

HORROR KILLER

すぼめた唇が言う
紫色の血色のいい生意気な怖気づいた唇
小さすぎて声が聞こえない
か細い蚊の鳴くような言葉は拾えない

一歩一歩 歩を進めるごとに揺れる銀の十字架
胸の上で左右へと忙しく踊るその艶やかな光
「綺麗なシルバーね」
そう言って君は無垢な顔で笑った

潤った茶色の瞳が動く
壁を通り抜けて見透かすような魔女の瞳
怯えたような気色は一切見せない
死んだように光を失った眼は見えない

君はどれもこれも綺麗なものが好きだと言った
綺麗に群生している黄色い雑草 その切れ端
「いい匂いがするわ」
そう言って君は雑草に鼻を近づけた

血の気のない腕が垂れる
青白い血管が浮き出るほど痩せこけた腕
それでも伸びる手をはたき抵抗する
それでもいずれ死ぬことさえも抵抗する

呪文を唱えるんだって
その唇で
魔法が使えるんだって
その瞳閉じて
魔方陣を描くのだって
その手腕で

ああ、
僕も食べたいなぁ
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by haccax | 2006-08-04 17:12 | 飴玉(短編)

鬱憤

最近きみが変わったの
そうかい
知を得る泉を知ったの
偉そうに僕に口叩くなよ
知ったふうに僕殴るなよ

最近ぼくも変わったの
そうさ
知を得る泉知ってたの
此処は僕だけが王様だ
知ったかぶりの王様だよ

さあ
僕にできることは何ですか
お靴でもお嘗めいたしましょうか

さあ
君に残されたもの何ですか
狭い箱庭で笑い飛ばしましょうか

ふざけんな。

此の頃暑くなりました
あの日
巣立った青い小鳥どうしたの
君の元に便り届きますか
今どこで何してますか

此の頃遠くなりました
今日も
乾いた黒い硯みているよ
黙ってないで動き出せ
黙ってないでホラ何か嘆けよ

見え透いた嘘重ねて
すこし先が見えないんだ
もうすこし時間が経ったら
透明な僕みえるから
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by haccax | 2006-08-04 01:04 | 飴玉(短編)

庭園物語(4)

僕のお庭には、
名も知らぬ綺麗な花が咲きました。
大抵それは大樹の根元で群生していたのであまり見栄えは良くなく、
すぐに庭師さんが引っこ抜いてしまうので、
いつもそこには無残に土の掘り返された跡ができました。
僕はそれを目にする度に大層痛々しく思いましたが、
いつもその花が咲いたのを見届けた次の朝には、
一片こぼした花びらさえも綺麗さっぱり姿を消されているので、
辺りはただ見栄え悪く芝生が掘り返されているだけで、
大変詰まらないものでありました。
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by haccax | 2006-08-01 10:09 | (庭園物語)