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第三者的視点

解かったような顔をして、
僕の頭を撫でる人がいた。

それはまだ記憶に新しくて、
放っておけば埋もれてしまいそうなくらい、
どうでも良いことだったのかもしれない。

男は、
笑みを浮かべていた。
のっぺりとしている顔全体の筋肉が、
だらしなく歪んで、
笑みを作っていた。

男は、
いつもよくわからない風に笑った。
その顔は、
笑っているのか泣いているのか、
僕にはよくわからなかったから。

男は、
知ったふうに僕に話しかけた。
下らないだとかつまらないと、
よく口にしていた。

女は、
いつも泣いていた。
だから、
いつも懐には新しいハンカチがあった。

女は、
ヒステリックに何かを叫んでいた。
あまり聞き取れなかったけれど、
死にたいとか殺してやると、
カミソリを片手に座り込んでいた。

女は、
左手首を隠していた。
それは女にとっての誇りだったそうだけれど、
誰もが口を揃えて異常だといったから。

男は、
いつも問いかけるような口調だった。
単なる興味本位の範囲はとうに超えていて、
自分の知らないことを他人が知っていると、
途端に静かになった。

女は、
地球全体が嫌いだった。
この世が無くなってしまえばいいのに と、
何度も目を見開いて口にした。

男は、
豊かな人間になりたかった。
他人よりも勝っていると思いたかったから、
知らないことでも知っているふりをした。

女は、
地球に存在したくなかった。
産まれたくなかったと何度も後悔して、
母親を泣かせた。

女は、
いつも濡れた目で僕を見た。
可哀想だとか良くわかると頷きながら、
頑張ってねと宛ても無い言葉を吐いた。

男は、
僕の代わりに死んでやると言った。
勿体無いだとか自分に言い聞かせるように、
眺めては被害妄想に明け暮れた。

僕は、
つまらなそうに下らない言葉を並べた。
偉そうな評論家は下らないと呟いて、
有名な宗教家は破廉恥だと叫んで、
頭の悪そうな女は意味不明に笑って、
頭の良さそうな眼鏡男は鼻で笑う。

僕は、
つまらなくて下らなくて鍵盤を叩いた。
偉そうな評論家は傷だらけだと嘲り、
有名な宗教家は宗教曲を歌い始め、
頭の悪そうな女は意味不明に騒いで、
頭の良さそうな眼鏡男は舌打ちする。

要するに、
要するものなどなくて、
つまるところ、
つまらないものなどなくて、
最終的には、
事の始まりで、
結局、
まとまらない。
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by haccax | 2006-01-18 08:33 | 飴缶(文)

想像少年

妥協ばかりしている、と 思った
初めての感覚は 飼い犬の気分だった

お人好しは疲れるだろう、と 笑われた
そうですね、と朗らかに笑んだ顔にも
疲れがみえてきたようだった

下らなくなんかない日常を
空気パックの端からつぶしていく
針も棘もない言葉たちに
鮮やかな色をつけて磨き上げる

誰かが創り上げた想像を
ひろい
とび色の野原に転がして
僕らが奇麗にわらった声を
ひろい
病室の白に溶かしていく

狙いなんて 定めないで
当てずっぽうに投げてしまえ
届くはずのない空に
解かりきったように伸ばす手

イメージのなかで生きていて
取り替える必要のない水槽
その中で泡を吐いて見ている

少年が持っていた夢は冷める
いつか夢から醒めてしまう前に
夢で生きていた銀色人魚は笑う
旅人は夢を探す夢をみていた
知らぬ間に掴んだ夢はそこでさめた

僕は 今でも夢をみているんだろう
とてもちっぽけな檻に閉じ込めた夢を
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by haccax | 2006-01-17 23:59 | 飴玉(短編)

メメント・モリ

明日、死ぬつもりで生きたなら
今日はもうすこしだけ、笑っていられるだろう

明日、死ぬつもりで生きたなら
今日を恋しがって、幾分涙が出るだろう

明日、死ぬつもりで生きたなら
今日だけは、人にやさしくできるだろう



立つ鳥はあとを濁さず

有終の美をかざり

浅き夢見し酔いもせず

泡沫のバラードを紡ぐ



今日、死ぬつもりで生きたなら
明日を知ることなく終われるだろう
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by haccax | 2006-01-10 07:42 | 飴玉(短編)

謹賀新年

明けましておめでとうございます。
本年も、どうぞ宜しく。

エキサイトが模様替えしたようだけれど、
新年になっても僕はホント、どうしようもない(笑)

ソフィアさん、新年お祝いコメントありがとう。
良いお年を。

散さん、初めまして。新年おめでとう。
今年もどんより曇天ですが、どうぞ宜しく。

ハンナさん、お久しぶり。あけましておめでとう。
今年もどうぞ宜しく。

お節介焼きな日本から離れて、深呼吸。
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by haccax | 2006-01-01 01:01 | あしあと専用箱

スポット

多分そういう風に
ヒトの流れと逆流しながら
生きていたかったんだと思う

目を合わせないように同化しながら
無色の中に名前を見つけて
すがって生きていたいんだと思う

どうしようもなく回り道をして
回りくどい言葉を選んで
あせって空回りばかりして転んで
そうやって自分創ってたのかもしれない

逃げ場のないリアリティのなかで
逃避術をおぼえてマスクをかぶって
ひたすらそれの繰り返し
成れの果てが、此れ
すべて仕方の無いこと
通過点に過ぎないこと

一晩不貞寝すれば忘れてしまうような
容易い脳内思考をもてあそぶ


気の抜けた、あやつり人形
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by haccax | 2006-01-01 00:00 | 飴玉(短編)