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牡丹

病んだ、言葉が、嘲り。
朽ちた、心が、首を傾げ。

誰かが、何処かで、ぽとり。
牡丹のように、落ちた。

ああ、また僕は、見逃した。

また誰かが、近くで、ぽとり。

巧く、出来なくて、朝で。
項垂れた、こうべを、擡げ。
束の間、聴こえる、沈黙。

誰かが、僕の、前で、ぼとり。

わらう、君が、僕に、ぽつり。
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by haccax | 2005-05-29 02:56 | 飴玉(短編)

dying message

僕の、遺書が見つかった。
なんで書いたんだろう、こんなモノを。
誰に書いたんだろう、薄っぺらい紙に。

文字通りの、殴り書き。
原型すらとどめていない文字。
擦れた線と線。
結ばれた形跡。
ぎっしりと、呪文のように詰め込んだ紙。

消しゴムで消した文字。
窪んだ跡。
今はもう、
何を書いていたか 思い出せないよ。

誰に宛てたか、だなんて
最初から 解っていた。

それを認識するのが怖かっただけ。

僕宛ての、ダイイングメッセージだから。
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by haccax | 2005-05-28 15:28 | 飴玉(短編)

夢遊病(2)

人と居る、ということに、慣れてしまっている。

僕がそこに居る、ということにも。

呼吸をするように、口許を吊り上げることも。
僕は、そうすることは、苦じゃなかった。
でも君は違った。
気付いてほしかったんだろ。
見ていてほしかったんだろ。
そうしているところを、見せたいんだろ。
だから僕は、目を逸らした。

僕は助けがほしいわけじゃない。
差し伸ばされる手を、待っているわけでもない。

それはただの、君が観た夢。

堕ちる途中で、囁かれた。
思考の沸点を超えた、言語で。

それはいつも、存在する「なにか」。
それにだれか、理由を付けてった。

僕はいつも、堕ちてゆく「人間」。
そこでだれか、定義してった。

スピード、上げすぎ、失速。
余計に、見えずに、墜落。
最初から、知ってた、不時着。
そのとき、聴こえた、共鳴。

死の間際、僕は生きていた。
生きている僕だけが、僕を殺すことができた。

生きようとした時、
僕が死んでいたのと同じように。
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by haccax | 2005-05-27 13:48 | 飴缶(文)

夢遊病

いつまで こうしているつもりなんだろう。
もう既に、時間の感覚がない。麻痺している。

本当に、僕は一体何をしているんだろう。
数字だけが規則正しく呼吸して、時を刻んでいる。

まだ昼だというのに薄暗いリビングに居る。
ただ居る。
融けてしまいそうなくらい。
もう、融けてしまっているのか。

乾いた瞳だけ動かす。
不意に動かしたビデオカメラのレンズ。
分厚いカーテンから洩れる外のひかり。
新鮮な空気は僕まで届かない。
死んでいる僕には届かない。

やり直せないと思うから、躊躇ってんだろう。
飛んでみればいい、そこから。
不時着した僕は宙ぶらりんのまま。

もうこりごりだ、もうたくさんだ。
どちらでもない存在なんて有り得ないから。

僕は、
生きているのか
死んでいるのか
分からなくなっている。
元々どちらでもよかったのかもしれない。
どちらでもなかったのかもしれない。
でも其れは有り得ない。
在ってはならないから。
在っても理解できないだろうから。

夢なら醒めていい。
夢をまた見れればいいんだ。
夢が死ぬことはない。
夢で死ぬことはない。

夢なら醒めなくていい。
夢にもう戻らなくていいから。
夢が生きることもない。
夢で生きることもない。

呼ぶ声がする。
声ではないけれど。
そもそも、音ではないのだけれど。
呼んでいる。
実体は存在しないけれど。
僕を動かしている、
その反対方面から、聞こえ続けている。
純粋に、魅了されている。

死に。
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by haccax | 2005-05-25 14:36 | 飴缶(文)

猫の眼

帰り道、歩いていた。
住宅街の狭い道を、縫って歩いていた。

駅から少し歩くと大通りに出る。
そこらじゅう、排気ガスが充満している。
前を歩くサラリーマンのタバコの煙をモロに吸ってしまう。

横断歩道を何回か渡ると、住宅街へと続く階段が見えてくる。
その階段を下りきると、小さな公園がある。
幼稚園くらいの子供が走り回っており、
滑り台近くで母親たちが密集して井戸端会議をしている。

公園の一歩手前の曲がり角を、左に曲がる。
さびれた赤茶色のアパートや、白い壁の一戸建てが続く。

短い、猫の声。

呼ばれた。
左を見た。
それは、アパートの、茶色いペンキが剥げかけた階段を2,3段のぼったところに、いた。
ごく至近距離に、汚れた野良猫がいた。
前足を器用に折り曲げて、丸まっている。
茶色だの白だの混ざりすぎて、訳のわからない毛色。

ソイツは一度、ゆっくりと瞬きをして、淡いグリーンの眼の瞳孔を細くする。
そしてまた、短く啼いた。
階段に、甘えるように頭を擦る。

僕は立ち止まって、その眼に見入った。
誰かに似ていた。

今日食べ残した弁当が頭に浮かんだ。
でも、さすがに猫でも白米は食べないだろ。
歩き出そうとした。

また、呼ばれた。

なんだ、コイツ。
さっきよりも少し進んだところで立ち止まり、階段のほうを振り返る。
すると今度は、背筋をピンと伸ばして、今にも日本語を喋りだしそうな顔をしている。

「...僕、ネコエサ持ってないから。ゴメン」
ポツリと言った。
ソイツはまた、ゆっくりと瞬きをした。
僕も、瞬き返した。
アイ・コンタクト。
前を、向きなおした。

ちょうど横を通り過ぎた、女の子が上目遣いでマンガみたいに笑っていた。
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by haccax | 2005-05-23 17:31 | 飴缶(文)

dis

よく分からないんだ...
キミがどうしてそんなに抵抗するのかが。

中途半端に澱んだ瞳。
強い光に影を落とす本体。
眼に映るカラーの世界。
あらかじめ用意された言葉。
朧げに欠けている記憶。
すり抜けていった感触。

まるで僕を見ているようだ。
でもキミはそれさえ嫌うんだろ。

ホントとかウソとか、ないんだよ。
どっちも僕らの中でしか生きれないだろ?
キミの美学に反しているだけ。
ただ悲観していたいだけ。

一度疑い始めたら、疲れるまで待つしかないんだ。
疑ってるくせに、進まない。
知りたいくせに、動かない。
それが、キミだ。
未だ気付かないの。

キミを呼ぶ声、聞こえていたんだろ。
聞こえないフリして逃げたのは、キミだよ。
それを今さら探すだなんて、捜すだなんて...

ほら、自分でさえホントを見失ってんだろ。

どうしたいの。
見つけてほしいの?

僕が 手探りで 其処から 底から 引っ張り出してやる
待ってんじゃねえよ 手を伸ばして 掴んで 浮き上がってこい
それさえ 嫌うのなら 其処から 底まで 沈んじまえ
苦しくなって もがいて まだ生きてるなら 生きようとしてしまったら
僕は 何回でも 飛び込もう
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by haccax | 2005-05-20 18:30 | 飴缶(文)

POOOOOOOOL

僕は未だ、ここにいる。 生きてる。

「きみの眼、死んでるよね」
息を、してる。
見えてるけれど、見てないよ。

分厚いまぶた、閉じた。 見えてた。
死んだ眼、閉じれなかった。
泳いだ。

閉じたまぶたの裏、なにが見えた?
僕は見てた。 焦げるほどに。

視線の先、そこから
黒い波紋がひろがっていって
真新しい 褐色のフィルムを
ライターの光が喰い荒らす

どうでもいいなら、もうそれで御終い。
そこで折り返し地点。
まぶたを開けた。

空の青。
プール。
反射光。
眩暈。

僕は、まだ浮いたまま。

背面。
ゴーグル。
千切れ雲。
水飛沫。
プールサイド。
日陰。
視線。

足が、つかないんだ。
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by haccax | 2005-05-19 21:38 | 飴缶(文)

プラットホーム

重い足、投げ出してた。
たくさんの荷物をおいて。

でも、そろそろだろ。
もういい加減、しおりを挟んでおきなよ。

僕の体温がうつった座席から立ち上がって、
大きく伸びをするんだ。

目を開いていただけだよ。
特別なにを見たというわけでもなかった。

ただ少し、長居をしすぎたみたいなんだ。

無意識に流れていくディスプレイのなかに。
それを透明に忠実に写す窓ガラスの奥に。

その向こうには何もなくって。

知っていて。

見つけようとして。

無意味なものに意味をつけようとして、いる。
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by haccax | 2005-05-19 00:05 | 飴玉(短編)

晴れの日は嫌いだ。
ひとりっきりの家の中からみえる世界が、
キレイに光り輝いてまぶしいから大嫌いなんだ。

重苦しい、空虚で、乾いた、まとわりつく空気。
口の中で、ねっとりと絡みついた舌。
怠惰に、貪欲に、息をしている。

いつもより、やけに音が響く。
言葉を発さなくても、誰も触れられない領域。
仮に僕が鼻歌をうたったとしても、誰ひとり聴いちゃいない。

冷たい窓ガラスを横にスライドして、脚を投げ出し、深呼吸。
ベランダに干してある洗濯物の影が、僕に縞模様をおとす。

汚れたくて、おぼれた。
今となっては、結果でしかなかった。

はじめがあったことに、終わってから気付いた。
「今まで歩いてきた道」なんてのも見えた。
それも単なる結果でしかなかったんだ。

眩しくって、一瞬光って、消えた。
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by haccax | 2005-05-17 23:59 | 飴缶(文)

ROOOOOP

変えたいのか、僕は。
何を変えたいんだ。

普通を、普遍を、
異変に、例外に。

見つけてほしいから隠れたんだ。
長い間そうしていたから、理由を忘れてしまっているだけだ。

強がって、乾いた笑いをこぼした。
そうさ、僕は、僕自身の弱さを知っていたから。

見栄を張って逆立ちしていた。
灰色の空にビルが逆さまに落ちることなんか有り得なかった。

あまりにもアリキタリで笑えた。
だってもう、すでに用意されていたんだ、そこに。
とっくの当に、それに気づいてたんだ。

沸点を過ぎて戻った。落ちた。
忘れようとして忘れてしまった。
忘れたことに気付いてしまった、また繰り返していた。
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by haccax | 2005-05-16 23:50 | 飴玉(短編)