<   2005年 02月 ( 5 )   > この月の画像一覧

行動パターン(1)

アルバムを眺めるように、携帯の着信履歴を眺める。
僕は何がしたいのだろうか、と考えてみる。
ただ拘束していたいだけだろう、と思う。
自分という檻の中に閉じ込めておかなければ、不安なんだ。
朝起きれば、いつのまにか檻の鍵は壊れている。
そして中身はもぬけの殻なんだ。
捕まえよう、と身をおこすにも、あまりに頭痛が激しくて倒れこむ。
携帯はバッテリー切れの、ただのプラスチックの塊のようだ。
だから、どうということはない。
携帯は充電しておいて、自分もそのままの状態で充電するだけだ。
咎めるものはいない。もしも咎められたとしても、ハイハイと頷くだけだろう。
あまり、「執着」というものは、ない。
服も黒であれば大抵着るし、静かであれば何でも好む。
植物を眺めているのも好きだし、読書も、昼下がりのガラ空きの電車に揺られるのも好きだ。
しかし、「執着心」というものは、話し方や好みタイプの話題にまで影響を及ぼすらしい。
僕には、よく分からない世界の話だ。
ぶらり立ち寄る駅前百貨店でも、本屋や服屋をカップルでうろついたりする意図は理解できない。
お前のセンスおかしいよ、と友人に笑われる。
そもそも僕の中のセンスとは、独自の文化であり、僕の世界を形作る設計図でもある。
僕の見える世界はおかしくない。寧ろ、僕は周りの世界がおかしく見えてしまうんだ。
携帯は「充電中」のしるしに、ずっと頭を赤く光らせている。
それはまるで赤信号のようで、そして僕はじっと待機していなければいけない。
いくら長い信号であっても、隣の親父のように怒鳴ってはいけない。
怒鳴っても信号は変わらないからだ。
どんなに車が通っていなくても、先ほど走って通り過ぎた男のように無視してはいけない。
終わりない白と黒のゼブラ模様の上でのた打ち回り、そのうち車に轢かれるか何かするからだ。
ずいぶんと長い間立ち続けていても、斜め前の女性のように泣いていてはいけない。
そのうち涙が枯れるか、その空虚な心に気付くかして、泣いても誰も助けてくれないことや
世界は妥協してくれないことを知ってしまうからだ。
僕には意地や根性などない。急ぐ理由も、とりわけ無いのである。
特に泣くこともない。他人のために泣くのはお行儀のよい子を演じるときだけであるし、
自分のために泣くなんてことはもっての他である。
執着の無さとは、なんとシンプルで質素で空虚なものなんだろう。
それは僕の世界に対する鏡映しのようなものなんだ。
[PR]
by haccax | 2005-02-27 00:13 | (EMPTY)

murmur

悪いのは、僕だ。
不機嫌にさせてしまったのは、僕の責任なんだ。
もうそろそろ子守りにも飽きてきたらしい。
表情はわからない。
ただ、会話だけがすれ違う。
僕の話したことばの後の、この少しの空白が嫌いだ。
少しも身動きできないくせに全身に鳥肌がたち、身震いをしてしまう。
そしてスクリーンごしに大きなため息を聞いて、スクリーンごしに思うんだ。
ああ、もう、終わりなのだと。
ただの、ふざけたゲームのひとつにしか過ぎなかったのだ。
それでもいい。もはや僕はもう、なんでもいい。
ゲームオーバーならば10数えるうちにコンティニューすればいいだけのこと。
イメージの中以外の僕は、要らない。必要ない。
作られた僕が、造られた笑顔で、僕を笑う。嘲笑う。
瞳の中の光がすうっと抜けていく感覚がわかる。
もう、いい。
僕の代わりは沢山いるんだから。
それでいい、あなたがそれで満足なら、僕はもう、それでいい。
[PR]
by haccax | 2005-02-26 23:40 | (EMPTY)

...

どうも、ご無沙汰してます。薄荷です。

更新が大分不定期になってしまって申し訳ないです。
気が向いたら書く程度なので、三日に一回見てくれれば丁度いいかと。
最近、いろいろ考えてると怖くなってくるんですよ。
自分も、周りも。


>ソフィアさん
一人には慣れています。
...と、表向きは見せてるだけなのかもしれませんね。
僕は、実は一人ではありません。
一人と一匹です。(笑)
こんな感じで、きっと多分おそらく元気です。

>リオンさん
映画のシナリオ、どうですか? あれから進んでいますか?(笑)
冬の話なので、続きがとても楽しみです。関東の方で「雪」というと、相当レアなものですよ。
僕のイメージって真っ白です、よね。
...ホントは真っ黒なんですけれどね、腹が。(笑)
僕も去年もらってきた子猫が、シャムの元捨て猫です。
そのことについては、今度の記事に書こうかな。
[PR]
by haccax | 2005-02-21 19:57

murmur

僕は「光」という言葉が大嫌いです。
そこには途方もない道先が見えていて、選ばれるべき枝が幾重にも分かれて犇くからです。
自分の足元の影さえ掻き消されてしまいます。
突然のフラッシュで目がくらんで瞼を閉じても、ねっとりとした眼球には光が焦げ付いています。

僕は「闇」という言葉を愛します。
光が嫌いだからという理由ではありません。
ただそこには混沌とした「ナニモノでもないナニカ」があるように思います。
それは無表情であり、無感情であり、沈黙であるように、実にたくさんの言葉を持っています。
そして、それらは僕を無条件で許します。
顔面の筋肉をあやつり笑顔を作ることも、体内の血液さえ流れだしそうな溜息さえもです。
何万回と、銀の針で取り繕うとも、世界に変化はありません。
随分と昔から在ったような、つい先ほど生まれてきたような、そういった世界なのです。

瞳からこぼれた大粒の涙も、のどが裂ける程の大きな叫びも、耳を劈くような笑い声も、
すべて闇のなかへ零れ落ちて吸い込まれてゆきます。

そこに永遠といった類の文字はありません。

人はそれらを「不思議」というのです。
[PR]
by haccax | 2005-02-21 19:54 | 飴缶(文)

Stray Sheep

通りすがりのおばさんが、少女に向かって言いました。

「ちょっと待ちなさい、そのネコをどうするの」

少女は、すこし大きめのサンダルをパタパタさせて通り過ぎようとしていました。

「・・・」

仔猫がみゃあ、と鳴きました。
少女はちらりと、少し眉根を寄せて振り返りました。
しかしすぐに愛想笑いを浮かべて、

「おばさん、だれ?」

屈託の無い声で聞き返しました。

「親御さんにも、その生き物にも迷惑がかかるでしょうに」

おばさんは、しわくちゃの顔にさらにしわを寄せて、嫌味に目を細めながら吐きすてました。
仔猫は目を見開いてじっとしています。
笑顔を貼り付けていた少女は、顔の筋肉を操ることを放棄しました。
代わりに腹の底から声を絞り出して言いました。

「だから何なのよ」
「あなただけの命じゃないのよ、分かってるの」
「うるさいなあ」
「私だったら保健所連れて行くわよ」
「あなたと私は違うイキモノなのよ」

お互いの顔が少々引きつったかのように見えました。

僕は、しばらくその様子を黙って遠くから見ていました。
静かに哀れんだ目で見ていました。
一番の卑屈モノは誰なのでしょうか。
[PR]
by haccax | 2005-02-13 16:44 | (灰色の国)