カテゴリ:(灰色の国)( 12 )

Stray Sheep

通りすがりのおばさんが、少女に向かって言いました。

「ちょっと待ちなさい、そのネコをどうするの」

少女は、すこし大きめのサンダルをパタパタさせて通り過ぎようとしていました。

「・・・」

仔猫がみゃあ、と鳴きました。
少女はちらりと、少し眉根を寄せて振り返りました。
しかしすぐに愛想笑いを浮かべて、

「おばさん、だれ?」

屈託の無い声で聞き返しました。

「親御さんにも、その生き物にも迷惑がかかるでしょうに」

おばさんは、しわくちゃの顔にさらにしわを寄せて、嫌味に目を細めながら吐きすてました。
仔猫は目を見開いてじっとしています。
笑顔を貼り付けていた少女は、顔の筋肉を操ることを放棄しました。
代わりに腹の底から声を絞り出して言いました。

「だから何なのよ」
「あなただけの命じゃないのよ、分かってるの」
「うるさいなあ」
「私だったら保健所連れて行くわよ」
「あなたと私は違うイキモノなのよ」

お互いの顔が少々引きつったかのように見えました。

僕は、しばらくその様子を黙って遠くから見ていました。
静かに哀れんだ目で見ていました。
一番の卑屈モノは誰なのでしょうか。
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by haccax | 2005-02-13 16:44 | (灰色の国)

ORDER MADE

もっと、違った色をください。

 - 白で、よろしいですか。

目にみえる身体のカタチをください。

 -    で、よろしいですか。

名前をください。

 -    で、よろしいですか。


―― 足したり、割ったり、引いたり、掛けたり、実に色々な体験をしました。
僕は     のために、僕によって     で、作られました。
確か、に     は、なにも証拠はないのだけれど、
     だから、   作られたのだけど、          。



欠陥商品(できそこない)
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by haccax | 2004-12-09 18:00 | (灰色の国)

灰色の国(10)

歯を食いしばれ そして奮い立ちあがれ
たとえ白い歯に 紅い血がにじもうとも
まだ 6拍の鼓動が 聞こえるのなら。

祈っても 願っても
つぎはぎだらけの心臓に
糸のない針をつきたてるだけ

どうか どうか 貪欲なアイで
もう一度 満たしてくれよ
ぽかり 空いた穴は
思ったよりも 空虚でがらんどう

音になれずに ただ空気を沈めた鍵盤のように
かたちを失くした 言葉のリボンが
ほつれて 絡まり かた結びされる。

それは僕のなかで
無性生殖を繰り返す 哀れなマリアのように
貪欲にまみれ実を貪った イヴのように
からっぽのはずの 空にむけて
彩りと華と欲望を ひと粒ずつ落とす。

食塩のかたまりの ミイラを晒したまま
ふれあった瞬間に 音もなく砕けて
乾ききって ヒビ割れたナミダ

躊躇っても 嘲っても
ムーンレイカーの瞳には
食塩水を溜めた湖と
彼だけの月しか見えない

どうか どうか 禁欲なコドクで
もう一度 突き飛ばしてくれよ
ぐらり 傾いた月は
聞いてたよりも 薄汚れて穴だらけ

声にならずに ただ空気を吸った風船のように
ことばを失くした 哀しみのウタが
あぎとうばかりに 過呼吸をはじめる。

まるい 二つのガラスごしに見える世界は
独りぼっちのカミサマの造った 出来損ないの箱庭
独りぼっちのカミサマを欺いて 裏切り捨てたリアル。

拭い去れずに 染みこんでいった血痕は
どうやら奥深くまで流れていって
取り返しがつかない程に シミついてしまったようだ...


(不協和音と歪なヴォイスと出来損ないのリリック)
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by haccax | 2004-10-08 22:35 | (灰色の国)

灰色の国(9)

不意に 耳元でキイキイキイと リピートするノイズが 貫きながら響いて
驚いて 半ば 呆れながら 目を醒ました。
鏡を 目の前にしているわけでも ない。

外のパーツだけ双子の 僕ら。

瞳の中のヒカリを 失ってしまった茶色の眼を 肌色の油ねんどに埋めて
半開きになった 唇からは 意味の無いピープ音の羅列が 吐かれる。
頬の筋肉を 全く使わずに「造られる」笑みは 僕に軽い恐怖を与えてから
静かに 沈黙の湿った空気を 紡いだ。

僕の 身代わり。

僕がボクを産み 僕がボクを愛し 僕がボクを裏切り 僕がボクを殺す。
その情景は とても滑稽だ。
お前には僕のように軽やかに笑うことも出来ないだろう。
いくら巧みにプログラムをインプットされようが無駄だ。
馬鹿正直な お前に 上手な嘘はつけない。

ボクの 身代わり。

例えバグが発生したとしても お前は自分で対処することができない。
適合するワクチンがなければ。
入力信号がなければ。
暗号文のような記号と数字の束がなければ。

愚かな知識を羊水として産まれてくる お前は
ひたすらに宛ても無く エラーを発信しつづける。

ニンゲンさえ 居なければ。
お前は 動けない。

オレハ ウゴケナイ。

―――――シャット・ダウン。


(“R・U・R” 応答セヨ)
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by haccax | 2004-10-05 22:45 | (灰色の国)

灰色の国(8)

乾ききった機械の、歯軋り。
ギチギチと鳴らしては、首を回して油を欲しがり。
油を一滴でも垂らせば、また昨日の朝の繰り返し。

早送りで巻き戻っていく世界を、僕は知っている。
砂嵐が、遠慮無く僕らを攫うんだ。

貪るように。

また機械は動き出す。
単調なコトバの羅列を吐きながら。
意味の無い暗号をペーパーに写して。
枯れたナミダやコエはアンインストール。
新しく産まれたアプリケーションを破壊して。
全て架空のボードの上で動くチェス。

やがて、ヒカリを失い。

「目の前が、真っ暗だ」

シャット・ダウン。


(“R・U・R” 排除セヨ)
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by haccax | 2004-10-04 23:31 | (灰色の国)

灰色の国(7)

僕と彼女しか知らないシンジツ
指きりして ヒミツを誓った

どんなに変形して歪んだ鍵でも
決して開けられることのない

アカズの扉

その先 閉じ篭って
仮初のマスクを被り
食塩で喉を潰し 声色を変え

ああ、未だ気付いていない 愚かな君
いい加減、よごれたカラーで塗りたくられた シラジラシイ言葉なんて
要らない、要らない
ソンナモノナンテ イラナイ

そんな夢 もうそろそろ壊してやろうか
最初からシンジツなんて知らないくせに
知った被って平気な顔をして心配するフリ
いい加減、飽きないかい? 子供騙しのお遊びはもうオシマイ

ああ、未だ気付かない 愚かな君
うるさく鳴く声も もう聞き飽きた
そろそろ壊してやろう

目ヲ醒マセ

アカズの扉、開いてやるよ...


(隠されたヒミツはアカズの扉に)
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by haccax | 2004-09-19 17:05 | (灰色の国)

灰色の国(6)

俺は、わざわざ傷つき嘲笑われるために
こうやって泥に溢れた濁流に、我が身を晒してんだよ
そうすりゃ 雑念も葛藤も全部 汚されて、流されて
古傷に 泥がこびりついて、浮き彫りにされて
この痛さを、自分自身で 痛感できるだろ?

ヒルみたいに背中に纏わりつく 泥を、拭って
棘ばっかり束ねて 血塗れになった両腕を、哀に染めて
乾いた大地を歩きすぎて 水分を失った両足を、奮い立たせ

それでも、それでも お前はついてこねえのかよ?
いつまでも牢獄みたいなとこに突っ伏して、黙りこくって
心の中に溜めこんで 溢れるの、待ってんのかよ

つまんねえ奴だな、引っ張ってやるから
否応なしに、連れてってやるよ
現実ってもんを お前の二つの黒目に見せてやんだよ
罪人だらけのネバーランドを、な?


(灰色の国の罪人)
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by haccax | 2004-09-14 09:42 | (灰色の国)

灰色の国(5)

自分には非がないか、何度も何度も確かめては
言葉を発する人が醜く思えた

それは、いつかの昔の僕に酷似していて可哀想だから?

臆病風にいつまでも吹かれたままで
いつのまにか、その状態に慣れてしまっている

本当にそれでいいのか、考える余裕もなく
ただの時間のいとまに飲みこまれ快楽に漂う

自己の解放?

自由ってことは逆に自由に縛られるってことだ
そう、実際には存在しないこと

僕らが勝手に錯覚してる、それだけのこと

そしてやっとそれに気付き、末端に触れて
少し沈んでしまっただけのこと


(上辺だけ浮かぶ灰色の国)
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by haccax | 2004-09-06 15:39 | (灰色の国)

灰色の国(4)

喉が潰れて血を吐いても、僕は歌い続けました
それでも君は一度も外へでて
聞いてみようとも思わなかったようです

月が溺れて光を失っても、僕は歌い続けました
それでも朝はやってきて
誰とも知らずに、おはようを呟きました

何を叫んでも、何が聞こえても
君は微動だにしませんでした
あくまで僕からのアングルの話ですが
少し君は、戸惑っていました

何故なら君は、僕のように喉を潰し血を吐きながら歌い
闇の中で生暖かい透明な水を目から零していたからです

ある晩、ふと静寂が訪れました
誰ともなく、ほっとした面持ちで外へ出ました
そこに倒れていたのが誰とも知らず
ただ自閉的にドアを閉ざしてしまったのです

それから、でした

音のなくなった世界に一粒の音が零れおちました
それは紛れもなく僕の涙で
君のようでもありました
消えることなく滲むことなく、深紅と白濁の液体が混ざって
鈍い音を、たてました

それだけで、十分でした

全てが止まったように灰色に凍りついた色は音を取り戻し
静寂はその音によって掻き消されました

月が溺れる宵には、その日のことが鮮明に浮かび上がるようです
誰も知らない闇の番人は
僕であり、君であったから


(音闇と月詠と灰色の国)
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by haccax | 2004-09-06 09:14 | (灰色の国)

灰色の国(3)

僕に 神はいない
神なんか、いないんだ

所詮、具現化することのできない実体の無い空想にすぎないのに
どうして君等はリアルに持ちこもうとするんだ?

絵空事を並べてみては崇めて拝み
脳内で生き絶えないように神に御供えっていうエサをやるんだ
貪りつくように神は喰らいつき、仮初の生命を維持するのに必死で
いつしか人の幸福を願うことさえ忘れてしまったんだ
そう 全ては自分の為に、自分の手元にあると錯覚して
人はもう、脳内に衰え愚弄された「上の空」の神を飼うことに飽きてしまった
神は、うろたえた心に最期のちからを振り絞って 「全ての神を消してしまえ」と囁いた
そして神を殺した罪を 何ひとつ拭えないままに
罪を言い訳の糧として、毒蜘蛛のように卑怯な糸を張り 巣食っている

いつまでもイメージしてるままじゃ 何も世界は変わっちゃくれない
でもリアルにイメージを持ちこんじゃいけない
あくまで違うんだ、そのことを理解しなきゃいけないよ

ゼロをゼロで割るのと同じさ

それは僕らの絶対的なルールなんだからね


(神を崇めた灰色の国)
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by haccax | 2004-09-06 08:52 | (灰色の国)