カテゴリ:飴玉(短編)( 148 )

ハチミツ

あたたかな 橙色の 陽だまりのなか

      アイスティーに 溶けてゆく 氷

うつろに 混ざってゆく 透明な 液体


     ぼくの うたたね する おと。


          蜜色に染まった 髪が

          うたいながら 空に絡んで

  僕はその空を めいっぱい吸い込む

      蜜色に染めてゆく 染めてゆく


遠くで わらいながら 踊る

   したたかな 人魚のような

きみの 冷たいキレイな笑みが

 遠くで わらいながら 煌めく


 まっしろな カーテンが

       みついろの れーすに

ゆらゆら

         ゆらゆら   ...
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by haccax | 2008-10-13 23:27 | 飴玉(短編)

漂着路

君は、僕を見るなり「可哀相」と微笑んだ
詰まらぬ飾り文句など着飾って

僕は知らぬ間に薄汚れて、
僕は束の間の楽園を愉しむ

堕ちた地上の世界に
一輪の純白の花が揺れて咲う
君は不馴れな笑みを浮かべて

箱庭の中の僕の言葉
ヘッドフォン越しに響く奇声
力任せに踏んでいるアクセル
行く宛てもなく着いておいで

詰まらない悲劇のヒロインぶって
君が苦しそうに悲鳴を上げて笑う
楽しいだろう?
不愉快な空気を掻き消すように
下らぬ女だ、と切り捨てるだけの余地もなく

虱潰しに朽ちてゆく君を弄る
吐いて捨てるほど拾ってきた君が
僕を不満にさせる
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by haccax | 2008-02-22 02:22 | 飴玉(短編)

大丈夫だよ、口癖の僕は
三度目で限界(いらだち)
繰り返し繰り返し、何度も確認する疑りぶかい声も
三度目は限界(あきらめ)
三度目の正直が無いまま
諦めるのやら、苛立つのやら
くたびれた二酸化炭素を吐き出す(フリ)
途切れる電波(いらだち)、続かない通話(あきらめ)
僕の所為?(ふたりの所為)

おいで、いつも飼い主の僕は
手招きするけれど(束縛)
近付いてくる無防備な好奇心も
尻尾を振ってくるけれど(偽善)
僕の飼い主は見つからないまま
諦めるのやら、苛立つのやら
くたびれた銀の首輪を締め直す(フリ)
千切れる紐(束縛)、届かない腕(偽善)
僕の所為?(ふたりの所為)
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by haccax | 2007-06-04 03:06 | 飴玉(短編)

BAD SAD MAD

如何したものか
こういう日に限って
見てはいけない物を
見てしまうんだ

一握の好奇心が
軽い嘔吐に取って代わる
後悔と一緒に吐き出して
溢れ出す嫌悪に顔を歪める

考えたくもないのに
眼を逸らせば深まり
聞きたくもないのに
眼を閉じれば澄んで

異常なまで尋常な日常
正常ならぬ愛情を求め
非情ベルも鳴らぬ戦場
立ち往生し続ける地上

絞め殺したい衝動と
途中放棄した倦怠と
結局なにもしないで
なにも思わないふり
なに一つ不自由なく
何もなく過ぎてゆく

少し黙っていてくれないか
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by haccax | 2006-11-11 11:11 | 飴玉(短編)

BORN

シャワーが
僕の背中に降りかかって
響く心地よい雨音と
燃えるようなヴェールを

僕は水滴に打たれながら
まんまるく膝を抱えて
その膝の上に頬をのせる
まっすぐに流れる海藻を

なにかの番組で
胎児はこうして過ごすという
熱い水滴が横顔をつたい
唇の隙間から入りこむ

きっと暗証番号が誕生日の主婦も
社長と飲み会で二日酔いのサラリーマンも
同じ格好で窮屈に、無垢な顔で
簸たすら壁を蹴っていたのだろうか

降ってゆく小さな粒が
僕をコンスタントに暖める
零れ落ちて流れる粒に
僕は溶かされてゆく

排水溝の奥から
波打ち際の音がする
冷え出した背中を
暖める手など空しく

開きかけた唇
そこから何が零れるの
なにも言えないまま
息を吸って不器用に愛想笑い

曇った鏡に映る背中
肩甲骨の茶色い黒子
羽ばたいている刺青
誰もが愛したすべて
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by haccax | 2006-11-10 20:25 | 飴玉(短編)

silly lovely timely

指を伸ばす
その先
誰かの手が見える
一呼吸おいて
左右つかず立ち往生している
僕はそこで立ち止まるんだ
夢見るハッピーエンド

バイバイもアイタイも

おぼろげな視界
その先
誰かの眼が撫でる
一歩引いて
空と壁を交互に嘗め回している
僕はそこで瞼を閉じるんだ
夢見たバッドエンド

売買も相対も

それで満足かい?
嗤い声がする
僕は一瞥して
手をとって歩く

そうやって毎日死んでは
生まれているんだろう

きっとこの線を越えたら
越えてしまったら
僕は、もう
今も、もう

黄色い線の 内側へ
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by haccax | 2006-11-09 19:08 | 飴玉(短編)

妄想具現化(1)

嗚呼下らない
下らない
下らない
下らない
いつからかも忘れてしまったよ。
本当に下らない。
生きていられるのだろうか。
本当に下らない。
目の前を飛び廻るショウジョウバエのようなんだ。
本当に下らない。
本当に幻滅した。

隣町の名高い科学者が、つい先日一瞬で死ねる薬を開発したという。
安楽死のように毒を回すこともなく、血を流すことも痛みさえも無く、
ほんの一瞬で、目的を果たす前に手のうちで潰されて死ぬフライのような死に様だという。
僕がどれほどそれを羨望したことか!
隣町の名高い科学者の研究室には、真の目的さえ知らずに、連日のこのことカモがやってきた。
僕がその事件を知ったのは、その長蛇の列に並び始めてから約二日と半日後だった。
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by haccax | 2006-10-24 18:51 | 飴玉(短編)

自首

ああ、またサボってるっていわれても
仕方がないよね
嗤われても

僕には理性コントロールができない
惰性には逆らえない
そうやって自分に負けてるんだ
弱ってる負けそうな自分を
負かしてしまうんだ
まあいいや、って、油断して
いつまでも中途半端に浮いたままで
いたいんだと思う
地に足をつけないで
宙ぶらりんで首吊ってて
ああもういいや、って
そういう瞬間があるんだと思う

こうやって言い訳しても
綺麗事に過ぎなくて
自己正当化に過ぎなくて
やっぱり
劣等感
怠惰
倦怠感
反抗期
自己満足
自己弁護
自己嫌悪
全部ひっくるめて
お子様セット
そういうのが見たいんだろ
そのままで居たいんだろ
ふと思い出しては、また
腹を抱えるが良いさ
ほら、また鼻で嗤う

一年後には
五年後には
十年後には
オトナになったら
どうせ詰んない
木偶の坊になるという
どうせ甘酸っぱい
思い出になるという
あと少しだけ
お子様モラトリアム

でも合間に見え隠れしているのは
結局
どうせ誰でも
僕をそういう眼で見る

金縛りはいつでも解ける
もう少しだけ
このままでいさせて

僕をそういう眼で見る
心底潰してしまいたい衝動
それでいて執着のない冷淡

ああ、誰か其処にいるのなら
戸に耳を欹てているのなら
今すぐに出て来い
今すぐに僕を殺してくれ

どうしようもない僕を
どうしようもないヤサシサで
宥めてくれるのは
もう
誰もいないのに


独り立ちするには
まだ足が竦むから
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by haccax | 2006-10-23 18:12 | 飴玉(短編)

P(ピアノ)

ショパンが泣いている
僕の指は戦慄いている
メンデルスゾーンの陽気が
まだ程遠いころなのに
単音のジムノペディが
単調につらつらと謡いだす
アラベスクは今宵も
雨の庭にたゆたう月の光とともに
亜麻色の髪の乙女と躍る
死んだような暖かい静寂が訪れた
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by haccax | 2006-10-20 19:36 | 飴玉(短編)

you're in me, i'm in you

最近きみはちっとも僕の話を聴かない
そうだろ
だから少しだけ嬉しいよ

最近きみはすこし歩くのが遅くなった
そうだよ
だから僕はまた少し嬉しい

最近きみはすこしも口を開かなくなった
そうだった
だから僕はすこしかなしい

だから箱の中身はからっぽ
お別れするのは寂しいけれど
僕はまだすこしだけ
きみでいたいんだ

僕の目の前
いくつものスポットライト
いくえにも影になって
熱を持ち始める
僕を捕らえて喰らう光が眩しくて
なかなか見つからない

また闇がやってくるんだ
僕だけじゃ潰れてしまった
僕はまだなにか
きみの言葉がほしい
きみにすがっていたい

そうだろ
ぼくのなかの、きみは
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by haccax | 2006-10-12 19:12 | 飴玉(短編)