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倶楽部

「それでは、これから倶楽部活動をはじめます」
部長の鈴木尚人が静かに言った。
鈴木尚人というのは、僕だ。
「起立、礼」
副部長の小林瞳が続く。
その言葉に促されて、集まった部員が一斉に起立し礼をする。制服の擦れあう音だけが響く。
締め切った美術室は所々カーテンの隙間から光が零れている。いや、寧ろそこだけ闇が裂けているといった方が正しいかもしれない。漸く闇になれた目で、やっと横長のテーブルと長イスがずらりと教室の前から後ろまで幾つか配置されているのがぼんやりと分かる程だ。備え付けのエアコンは準備室から絵の具のにおいを運んできているらしく、酷い日にはニスや木工用ボンドのにおいまで混じっている。
僕は部員全員が着席する音を聴くと、赤い懐中電灯を付けて手元の名簿を照らした。
上からひとつずつ読み上げ、点呼する。曜日ごとに振り分けされたその名簿には、二重線で消された跡や太い字で書き直された名前が数え切れないほど存在する。僕はそれを、一から読み上げるのだ。

人は、誰しも仮面を被っているものである。

この倶楽部は、その仮面に喰われた生徒たちの謂わば教会のようなものなのだ。
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by haccax | 2006-09-30 15:10 | (倶楽部)