カテゴリ:(ハッカ・ドロップス)( 2 )

黒の少女

寒くなってきましたね
やっと衣替えがなされるころに
僕は帰りの電車のなかで
黒い黒いセーターを着た女の子を見ました

長くて真っ黒なストレートの髪をしていて
服の袖からすらりと長く、棒のように伸びた腕と
小枝のように細い5つの指は
カタカタ、カタカタ
空を引っ掻いてパントマイムを繰り返す

弾いていたのはドビュッシーのアラベスク第一章でした
さざなみのように広がったメロディは
長い長い髪を 吹くはずのない風になびかせながら
細長い腕で 小刻みに呼吸しながら
虚空の鍵盤を、強く打っていた
一瞬、僕に気が付いたようでした

伏目がちに視線を戻した彼女は
足早に黒のブーツを動かしホームへ降りて
人のごみと夜の闇に飲みこまれていきました

「黒のカラスが空を飛ぶなら、黒のわたしは地を這うわ」


(ハッカ・ドロップス:黒飴)
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by haccax | 2004-09-16 19:29 | (ハッカ・ドロップス)

ハ ッ カ 飴

雨が ざあざあと 降りました
ひかりに照らされ きらり光りました
たくさんの色を たたえた その粒は
ちいさな空き缶に あつまりました

たくさんの色は ひしめき合いながら
お互いの色を 褒め合いました

隅っこの方で なにかが呟きました
でも だあれも 相手にしませんでした

何色にも 混ざりたがらない粒が
ひと粒だけ ありました

だから だあれも 相手にしませんでした

隅っこの方で また なにかが呟きました
でも だあれも 相手にしませんでした

透明な その粒は
しくしくと 声を殺して泣きました

何色にも 混ざりたがらない その粒は
なみだを吸って 濁った色になりました

すこし しょっぱくて 塩辛い その粒は
カラン、カランと 他の粒と ぶつかり合いながら

自分の色を 一番に愛しました
自分の味を 一番に好みました

でも だあれも 相手にしませんでした

もし あなたが 隅っこで
ちっこくなった 白色の飴を 見つけたなら
ふうっと ホコリを払って 舐めてやってね

僕の 分身だからさ


レイン・ドロップス
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by haccax | 2004-08-29 20:20 | (ハッカ・ドロップス)