静止

一瞬めまいがした
肺はとまっていて
その数十秒だけは
浮かんでいる気がした

なんて生きにくい世界だろうと
少しだけ神様を呪った
白と茶のハトが笑った

晴れた夜には
空を見ていたはずなのに
曇った僕の目には
空さえ映せない
灰色のコンクリート
地下鉄のドブネズミ
洗面所のホール

くしゃくしゃになったスケッチブック
消せればいいのに
消しカスだけゴミ箱に溜まる
煙を吐くマンホール
割れたスケートボード

イヤホンを引っ掛け
ナナメ45°に目を伏せ俯いて
タオルを濡れた髪にかぶせて
パーカーのポケットに手をつっこみ
フル防備の準備完了

響く妹の幼かった声
すこし大人びて
通話口を押さえた

音楽に掻き消された声
無声映画みたいに
くちだけが忙しなく動いた

僕はそうやって誰も居ない空間に向かって
目を凝らしもせず突っ立って考えているんだ
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by haccax | 2005-10-04 07:28 | 飴玉(短編)


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