黒の少女

寒くなってきましたね
やっと衣替えがなされるころに
僕は帰りの電車のなかで
黒い黒いセーターを着た女の子を見ました

長くて真っ黒なストレートの髪をしていて
服の袖からすらりと長く、棒のように伸びた腕と
小枝のように細い5つの指は
カタカタ、カタカタ
空を引っ掻いてパントマイムを繰り返す

弾いていたのはドビュッシーのアラベスク第一章でした
さざなみのように広がったメロディは
長い長い髪を 吹くはずのない風になびかせながら
細長い腕で 小刻みに呼吸しながら
虚空の鍵盤を、強く打っていた
一瞬、僕に気が付いたようでした

伏目がちに視線を戻した彼女は
足早に黒のブーツを動かしホームへ降りて
人のごみと夜の闇に飲みこまれていきました

「黒のカラスが空を飛ぶなら、黒のわたしは地を這うわ」


(ハッカ・ドロップス:黒飴)
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by haccax | 2004-09-16 19:29 | (ハッカ・ドロップス)


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