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今日の、かえりみち。

僕の足許を、ナメクジが這いつくばってすすむ。
俯いていた僕は、ふと、見下して卑下しようと唇がかすかに開いた。
でも、何も言えないままだった。
無言で、無表情で突っ立って、そいつを見送った。

駅の改札を通りぬけると、まるで何かを示し合わせたかのようにベルが鳴る。
キケンデスカラ、キイロイセンノウチガワニ...
通り越していく窓を横目に、キイロイセンの上を歩く。
デコボコして、窪みにスニーカーがはまり、すぐにバランスを崩し、
列車と数ミリの間で軸足を変える。
垣間見えたホームの底には、飲み終わったペットボトルと麦藁帽子が落ちていた。

失速して停止した電車に乗りこみ、僕は眉をしかめる。
ノイズの箱。悪臭の女。脂ぎったサラリーマン。ド派手な婆さん。
酒くせえジジイ。大口開けて寝る女子大生。喪服で楽しそうに談話する年配。
日常。
いつもの。
つまんねえ平凡な日常。

全て正常通りに作動してる。

1つや2つのバグやウィルスは、修正されるか自己消滅する。

世界のウラ。
「通常通り」黒く染められているウラ。
闇に飲みこまれ、ひたすらに息を潜め、目をぎらつかせ、カネは人を買う。
少年法?性犯罪?ポルノ?人身売買?レイプ?売春?マリファナ?ヤク?引きこもり?
暴力団?ワイロ?殺人?出会い系?少年犯罪?
ウラの罪人は、いろいろなものに理由をつけて区切ろうとする。
加害者の少女の好んだ映画、音楽、テレビ、インターネット。
シツコク根掘り葉掘りして「違い」を生み出そうとしている。

「我々一般人とはこんなにも違う。気が狂っている。」

そりゃチンパンジーからしたら人間は言葉の通じないキチガイのサルだ。
お前、一人称から間違ってるぜ。
我々って誰だよ。
一緒にしてんじゃねえよ。

つり革の女性週刊誌に、身勝手さを感じた。
自分を世界だと勘違いしてる奴が一番厄介だ。
全体の一部分でしかないのに、ひとりでに、いや後ろに協力者を引き連れて
まるで何かの代表みたいに立ちあがって。
勘違い、思いこみも甚だしい。

結局、みんな自分が可愛くてしかたない。
守りたくてどうしようもない。
犠牲になんかできない。
ギブアンドテイクじゃないと納得しない。
得るのと同時に失っているもの。
信じるのと同時に裏切られていること。
産まれた代償に、死ぬこと。

何も、しらないままでいい。
知らないまま、白々しい言葉を吐きつづければいい。

意味なんて無くていい。
勝手に解釈してりゃいいじゃん。

そういうイキモノなんだからさ。
by haccax | 2004-09-16 14:07 | 飴缶(文)


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